安易な色変更はNG – トンマナ(デザインの統一感)
デザインを制作していると、「この部分をもう少し目立たせたい」「なんとなく違う色にしてみよう」といった理由で、安易に色を変更してしまうことがあります。しかし、このような場当たり的な色の使い方は、デザイン全体の統一感を損ない、ブランドイメージを大きく左右する可能性があります。
今回は、トンマナ(トーン&マナー)の観点から、なぜ安易な色変更がNGなのか、そして統一感のあるデザインを作るためのポイントについて解説します。
トンマナ(トーン&マナー)とは
トンマナとは「トーン&マナー(Tone & Manner)」の略で、デザインやブランディングにおける一貫した表現スタイルのことを指します。色彩、フォント、レイアウト、写真のテイストなど、視覚的要素全体に統一性を持たせることで、ブランドの世界観を明確に伝える重要な概念です。
特に色彩は、人の感情や印象に直接的に働きかける要素であり、トンマナの中でも最も重要な要素の一つといえるでしょう。
安易な色変更が引き起こす問題
1. ブランドイメージの混乱
統一されたカラーパレットを無視した色使いは、受け手に混乱を与えます。例えば、コーポレートカラーが青系で統一されているのに、突然鮮やかな赤を多用すると、ブランドの信頼性や専門性が疑われる可能性があります。
2. 視覚的な違和感
色相や彩度、明度のバランスが崩れると、デザイン全体に違和感が生まれます。この違和感は、ユーザーの離脱率向上やブランドへの不信につながる恐れがあります。
3. 情報の優先順位の混乱
色は情報の重要度を示すシグナルとしても機能します。安易な色変更により、本来伝えたい情報の優先順位が曖昧になり、ユーザーが迷子になってしまう可能性があります。
4. ブランドイメージの毀損
一貫性のないデザインは、プロフェッショナルとしての信頼性を損ない、ブランドイメージを低下させる可能性があります。例えば、高級感を打ち出しているブランドが、安易に派手な色を使ってしまうと、そのイメージが損なわれてしまいます。
5. メッセージの伝達阻害
色は、特定の感情や連想を引き起こす力を持っています。ブランドが伝えたいメッセージと色のイメージが合致しない場合、メッセージが正しく伝わらない可能性があります。
6. 認知度の低下
ブランドカラーは、顧客がブランドを認識し、記憶するための重要な要素です。色を頻繁に変更したり、統一感のない色使いをしてしまうと、ブランドの認知度が低下する可能性があります。
統一感のある色使いのポイント
1. カラーパレットの設定
まず、プロジェクト全体で使用する色を事前に決定しましょう。一般的には以下の構成が推奨されます:
メインカラー:ブランドを代表する色(1-2色)
サブカラー:メインカラーを補完する色(2-3色)
アクセントカラー:強調に使用する色(1-2色)
ニュートラルカラー:背景や文字に使用する色(グレー、ベージュなど)
2. 色の役割を明確化
それぞれの色に明確な役割を与えることが重要です。例えば:
青:信頼性、安定性を表現
赤:緊急性、重要性を表現
緑:成功、完了を表現
グレー:中立性、補助情報を表現
3. 比率とバランスの管理
色の使用比率も統一感に大きく影響します。一般的には「60:30:10の法則」が有効です:
60%:ベースカラー(背景色など)
30%:メインカラー(主要コンテンツ)
10%:アクセントカラー(強調要素)
実践的な運用方法
スタイルガイドの作成
決定したカラーパレットや使用ルールを文書化し、チーム全体で共有しましょう。カラーコード、使用場面、NGパターンを明記することで、一貫性を保つことができます。
定期的な見直し
デザインが完成した後も、定期的に全体を俯瞰して色使いをチェックしましょう。
特に長期間にわたるプロジェクトでは、途中で色使いがブレやすいため注意が必要です。
ツールの活用
Adobe ColorやCoolorsなどのカラーパレット生成ツールを活用して、調和の取れた色の組み合わせを探すことも有効です。
デザインにおける色の統一感は、ブランドの信頼性や専門性を左右する重要な要素です。安易な色変更は、一時的な効果は得られても、長期的にはブランドイメージの毀損につながる可能性があります。
事前にしっかりとしたカラーパレットを設定し、それを守ることで、統一感があり、かつ効果的なデザインを実現できます。「なんとなく」ではなく、「なぜその色を選ぶのか」という明確な理由を持って色を選択することが、プロフェッショナルなデザインへの第一歩なのです。